バカなカエルと 井戸の中の小鳥
むかしむかし、ある森の古い井戸のそばに、一匹のカエルが住んでいました。名前はポチャ。ポチャはとても真面目で、毎日一生懸命に井戸に桶を下ろしては引き上げていました。
しかし、井戸の中には何もありませんでした。
それでもポチャはやめませんでした。
「井戸には水があるはずだ。だって、井戸は水をくむものだから。」
ポチャはそう信じて、今日もまた桶を下ろしました。
——そしてある日。
ポチャはいつものように桶を引き上げていましたが、突然、井戸の中からかすかな声が聞こえました。
「ねえ、ポチャ。」
ポチャは驚いて、桶をのぞきこみました。そこには、小さな美しい小鳥がとまっていました。羽は淡い光をまとい、青や紫にやさしく輝いています。
「おまえ、誰だ?」
「ミアよ。あなたの中にずっといたの。でも、ようやく声をかけられるようになったの。」
「俺の中に……?」
「そう。私は、あなたが本当に知っていること。でも、気づかないふりをしていること。」
ポチャは混乱しました。
「そんなことより、お前、こんな井戸の底で何をしてるんだ?」
ミアはにっこり笑いました。
「それを聞きたいのは私のほうよ。ポチャ、どうしてこんな井戸で水を汲もうとしているの?」
ポチャは少しムッとして答えました。
「だって、井戸は水を汲む場所だ! だから、俺はこうして毎日……」
——そのとき、ポチャは言葉に詰まりました。
「……でも、水は出てこない。」
ミアは、優しくうなずきました。
「ポチャ、あなたは知っているのよ。本当は、ここに水がないことを。」
ポチャはぎゅっと拳を握りました。
「そんなわけない! もし俺がやめたら……俺が今までやってきたことは、全部無駄になっちまう!」
ミアはそっと羽を広げました。そして、かすかに震えるポチャの頭にそっとくちばしを寄せて、囁きました。
「やめることは、無駄じゃないわ。間違いを知ることは、進むことよ。」
ポチャは、井戸の底を見つめました。暗くて、乾いていて、静まり返っている。
——そうだ。ずっと前から知っていた。
ポチャの喉はカラカラで、体は弱っていた。ずっと、このままじゃダメだと分かっていた。
それでも、手を止めるのが怖かった。
ポチャはそっと目を閉じて、息を吐きました。
「……どうすればいい?」
ミアは優しく微笑みました。
「この井戸を見上げて。光のあるほうへ。」
ポチャは顔を上げました。井戸の口の向こうには、眩しい空が広がっていました。
「俺は、ここから出られるのか?」
「ええ。でも、出るって決めるのは、あなたよ。」
ポチャは震える足で、井戸の壁を登り始めました。
最初は怖かった。手が滑るたびに「やっぱり無理だ」と思いそうになった。
でも、そのたびにミアの声がした。
「もう少しよ。」
「大丈夫、あなたはできる。」
そして——
ポチャは、井戸の外に出た。
そこには、広い世界が広がっていた。やわらかい草、流れる川、きらめく水面。
ポチャは、ふらふらと川へ歩いていった。そして、初めて本物の水をすくって飲んだ。
甘くて、冷たくて、生き返るようだった。
「こんなに簡単なことだったのか……?」
そのとき、ポチャの肩に、ミアがふわりと舞い降りた。
「簡単じゃなかったわ。でも、あなたはやったの。」
ポチャは空を見上げた。青くて広い空。その中に、ミアの羽が美しく輝いていた。
「……なあ、お前、どこに行くんだ?」
ミアは、くすっと笑った。
「私はずっと、あなたの中にいるわ。だから、また迷ったら、私の声を聞いて。」
ポチャが瞬きをした瞬間——ミアの姿は、風のように消えていた。
けれど、その声は、確かに心の奥に残っていた。
——「間違いを知ることは、進むことよ。」
■ 実践 個人の選択かどうかの選別
私なら、ポチャになんて言う?
1)「ポチャ、努力することは素晴らしいけど、努力の方向を間違えたら、ただの消耗よ。」
2)そして、優しく 「もしこの井戸に本当に水があるなら、少しは湿っているはず。でも、見てごらん? 乾いているでしょう? それは、もうここに水がないってことよ。」
3)「じゃあ、試しにあの池まで一緒に行ってみない? そこにも水があるか、確かめてみようよ。」
ポイント:変化を怖がる人には、「今すぐ諦めろ」じゃなくて、「他の可能性を試してみない?」って言うのが大事。そうすれば、自分自身が気づくチャンスを持てるから。
4)自分が水を持ってきて目の前で飲むわ。「ほら、おいしいわよ」ってね。
■ まとめ
盲点(例:努力の方向を誤ると、ただの消耗になること)に気付かせる方法
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