2025年1月31日金曜日

たぬきどんの事情

 これは、泥の船を作っているたぬきどんのお話です。

いったいどんな理由で、たぬきは、泥の船を作ることになったのでしょう?

それはむかーしむかし、たぬきどんがまだ赤ちゃんだった頃、です。

その冬は特別寒く、夏も短く、お母さんタヌキとお父さんタヌキは、赤ちゃんタヌキを置いて、二人とも餌を取りに行くのでした…

たぬきの住まいは暗い穴の中ですが、たぬきどんは、寂しくてたまりません。

まだ赤ちゃんだったからです。

えーん、暗いよう、怖いよう、お腹が空いたよう…

そうして泣いても、泣いても、おかあさんタヌキもお父さんタヌキも出てしまって、なかなか帰ってきませんでした。

帰ってきても、お母さんタヌキは、「ほら、お食べなさい」というだけで、くたびれてしまって、静かに横になってしまいます。お父さんたぬきに「遊んでよう」とお願いすると、お父さんたぬきも「あとでね」と言って寝てしまいます。

そうして、たぬきどんは、寂しいなぁと思って大きくなったのでした。

そんな厳しい冬が終わり、春になって、皆が穴から続々と這い出して来ると…

あらー!びっくりしたことに、たぬきの他の家族は、みんな子だくさんで、3匹も4匹も、時には5匹も子たぬきがいるのです。

たぬきどんは隣の家のタヌキに言いました。

 「とってもさみしい冬だったね」

すると隣のタヌキは言いました。

 「そんなことないよ!」

実は、そっちの巣穴では、ぎゅうぎゅうで大変だったのです。

でも、たぬきどんには、そのことは分かりません。

 「僕はひとりぼっちなんだ…」

みんなは、兄弟がたくさんで、楽しく温かく過ごしたんだ…そんな風にたぬきどんは思ったのです。

たぬきどんは、大きくなったら、楽しくて大きな家族を作るんだ!と思いました。

それで、船を作ることにしたのです。

船ならみんなが乗ってみたいといいますからね。

でも、たぬきは、木を切ってきたり、軽いもので船を作ることは思いもよらなかったので…いつも自分が住んでいる巣穴と同じ素材で、船を作ることにしたのでした。

それで泥の船ができることになったのでした…

お終い。

■ 心理学的要約



1. 幼少期の孤独感と愛着形成

たぬきどんが赤ちゃんの頃、両親から十分な愛情やケアを受けられず、「寂しい」という感情を抱えながら成長しました。これは愛着理論における不安定な愛着形成を示唆します。

2. 比較と自己概念の形成

春になり、隣の家のたぬきが子だくさんであると知ったたぬきどんは、他者との比較から「自分は孤独だった」と思い込みます。この主観的比較が「自分だけが不幸」という認知バイアスを生みました。

3. 補償行為と目標の追求

たぬきどんは孤独感を埋めるために「大きな家族を作る」という目標を持ち、みんなが乗れる船を作ろうとします。これは過去の欠乏感を克服しようとする補償行為の例です。

4. 失敗と学びの欠如

しかし、巣穴の泥で船を作るという選択は、新しい環境や挑戦への適応力の欠如を示しています。過去の慣れに囚われた結果、非効果的な方法を選んでしまいました。

教訓

  • 幼少期の愛情不足は長期的に影響する。
  • 他者との比較は認知バイアスを生みやすい。
  • 過去の欠乏感が行動の動機となる一方、適切な学びがないと失敗を繰り返す。

この物語は、孤独感や補償行為が人生に与える影響と、失敗からの学びの必要性を象徴的に描いています。

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